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エッセイ・・私の好きな曲

野谷  恵

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2001年春、札幌音楽家協議会機関誌「コンコルデ」(年1回発行)に掲載された文です。
「私の好きな曲」というタイトルでのエッセイ・・・というご依頼でした。
限られた字数の中では、とてもとても語り尽くせない「お題」でしたので、この続きは、
いつかまた書こうと思っています。
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今まで人前で演奏してきた曲の中から、心に残る曲について・・・。

まず、私にとって特別な作曲家である、リスト。  
’88年春の、オール・リスト・プログラムで弾いた、「愛の夢」、「2つの演奏会用練習曲」
(森のささやき、小人の踊り)、「忘れられたロマンス」、「ダンテを読んで」、「オルガンの為の
前奏曲とフーガ」(原曲:バッハ)、「エルザの夢」(原曲:ワーグナー)、「悲しみのゴンドラ」、
「葬送」等の他にも、「オーベルマンの谷」、「悲しみの聖母」、「夢の中で」、「嵐」(夕立)、等々、
全部について書きたい(!)のですが、今回は1曲だけ・・・。

「波を渡るパオラの聖フランシス」は、弾いていて映像が浮かびます。神を讃え、祈りながら、
水の上を歩く聖人の姿が見えます。

リストは、歌劇のように物語の筋を追って、ピアノ曲も書いたそうですが、そう考えると後半で、
聖人を排斥した舟が嵐に翻弄され難破すると思わせるところがあります。
やがて雲間から光が差し、天使達の大合唱がとどろくようなクライマックス。 総てが終わり、
敬虔な祈りとともに回想する終幕。

この壮大な音劇は、ラテン語の祈祷文を歌詞とする男声合唱と、管弦楽で演奏すると
素晴らしいと思います。

’92年に、サントリーホールでこの曲を弾いた直後、お会いした指揮者・某氏にそう話すと、
「いいですねえ。そのアイディア、頂き!」と言って下さったのですが、実現したのでしょうか・・? 
(管弦楽だけの録音は、実在します。)

もう一人の特別な作曲家、ラフマニノフ。 
札幌市新人音楽会で弾いた「ピアノソナタ 第1番」は、当時から好きでしたが、十数年後、
生徒に教えた時、各声部の絶妙な関わり等、奥の深さに改めて感動しました。

「幻想的小品」、「楽興の時」、「前奏曲」等、10曲以上弾いた彼の作品は、全部、
心底、好きです。

バッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」は、弾いていて泣けてくることがあるくらい好きな曲ですが、
疑問がひとつ・・・。

ニ長調になって4小節目の最後のfisは、ヴァイオリンの原曲では、aです。なぜ、この音を
変えたのか? ブゾーニの思い違い、あるいは、初版の楽譜の印刷ミスということはないのか?
(ご意見募集!) 次の機会には、aを弾こうかと考えています。

シューベルトの「さすらい人幻想曲」は、最初に譜読みした時には、あまり好きになれずに
リサイタル曲目からはずし、遠藤道子先生から「なんでやめるの、あんないい曲」と
言われたことが心に残って、いつか、改めて取り組もうと考えていました。

数年後、急に決まった3ヵ月後の演奏会でこの曲を弾こうとしたら、今度はヘゲデューシュ
先生が猛反対。「リストと違って、ピアノがヘタだったシューベルトは、無茶を書く。その無茶を
弾きこなすには、年月が必要だ。」とのことで、「もし僕が、3ヵ月でこの曲を弾けと言われたら、
ヒャクマンエン(これだけ日本語)もらっても断る。」とまで言われ、別の曲にしました。

さらに数年後、ついに弾いた時、「あんないい曲」とのお言葉も、「ヒャクマンエン」の説得も、
深く納得した次第です。

嫌いだったバルトーク。ラントシュ先生に強く勧められ、’88年秋のリサイタルの曲目に
「ブルガリアのリズムによる6つの舞曲」を入れたら・・・強烈なリズムが快感(!)でした。

’83年の初リサイタルで弾いた、ノルドグレンの「雪女」
照明効果の雪の中、私が書いた脚本を、声楽の工藤篤子さんが朗読後、演奏しました。
クラスターの息詰まる衝撃。琴の爪で弦を直接弾いた時の悲痛な響きは、忘れられません。

さて、’98年秋、突然、作曲を始めました。’90年から、岩河智子先生に楽曲分析による
演奏指導を受けていますが、分析の積み重ねが自然に作ることに結びついたような気もします。
2度程公開で演奏しましたが、自作を弾くのは説明できない幸福でした。

というわけで、一番好きな曲は、「自作」・・なんていうオチは、さぞ呆れられると思いますが、
機会がありましたら、お聴き頂ければ幸いです。



(一部加筆しました。文中お名前を出させて頂いた先生方に、心から感謝申し上げます。)

※文中最後に書かれた「自作」は、この3年後、2004年のリサイタルで6曲演奏しました。




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