ピアノのある人生
野谷恵
〜レッスン室に見る人生模様〜
野谷恵
'02、'03年の日記より抜粋(順不同、一部加筆)
Part.1,’03年の日記より
●ピアノを弾く理由・・・・・どう生きるか。 野谷恵
「今更ピアノなんか習ってどうするんだ?」と友人に言われて、温厚な彼もムッとしたようです。
どうするも、こうするも、・・・何一つ心の糧となる趣味もなく
「時間がない」ばかり言っているお友達より、ない時間を無理にやりくりしてでも、
好きなピアノを弾いて、感動する時間を持てる彼の人生の方が素敵・・・・そう思いませんか?
うちは殆どが大人の生徒なので、色々な人生模様があります。
「ピアノなんか習ってどうする?」と、全く同じ言葉を家族から言われ、
言い返せなくて黙って諦めていた女性もいます。
彼女は癌を患ったことがきっかけで、「一度だけの人生なのだから、
やりたいことをしよう。」と決心し、ピアノを習い始めました。
彼女は、癌の手術は成功しましたが、他にも病気を持っていますし、
非常にハードなお仕事をしています。
それだけで大変なはずなのに、さらに、無理に時間を作ってレッスンに来ます。
別にピアノの先生になりたいわけではなく、ずうっと前からピアノが弾きたかったから。
ただ、それだけ。
それだけで、十分ですよね?
自分が本当にしたいと思うことをするのに理由はいらないし、
人の目や家族の意見にも、(ちゃんと働いて自立している社会人なのですから)
こだわる必要はないと思います。
誰にも迷惑をかけるわけではないなら、本当にしたいことをする方が、豊かな生き方ですよね。
彼にも、彼女にも、ピアノを弾きたいという気持ちがある限り、
周囲や状況に負けずに弾き続けてほしいと、心から願っています。
●一回入魂っ!!(笑) 野谷恵
2ヶ月ほど前からレッスンに来ている小学校の先生は、明るく、気さくで、大らかで、
こういう先生が担任なら、神経の細い現代っ子達はほっとするのでは・・・
と思うようなキャラクター。今、「愛の夢第3番」を練習中です。
今までも、弾き方が分かって嬉しいといった内容のメールをくれたりしていたのですが、
今日、改めて言われたのは、後ろから2ページ目の、
例の(みんなが苦労する)小さく印刷した音符の下降音型のこと。
「前は、1回弾いたら、もう腕が痛くて痛くて、1回しか弾けなかったから、
『一回入魂っ!!』って感じで練習してたんですけど・・」と笑いながら言って、
「今は、ここだけ10回続けて弾いても、どっこも痛くならないんです♪」と、
本当に嬉しそうな、いい笑顔で話してくれました。
こういう風に喜んでもらえると私も嬉しいです。
(そういえば、勉強会で凄く変わっていた難曲のお兄ちゃんは、肩凝りが治ったと喜んでくれました。)
でも、もっと嬉しかったのは、この先生が名曲に挑戦している理由。。。
音楽の時間に、子供達に弾いて聴かせてあげたいのだそうです。
これからもショパンのノクターンとか有名な曲、いい曲を色々勉強して、子供達の前で演奏して、
「リストってこういう人なんだよ、とか教えてあげたくって。」とにこにこして話してくれました。感動♪♪
大分前ですが、「しぶおんぷ」と「しぶんおんぷ」、あるいは「クレシェンド」と「クレッシェンド」で
○か×かを決め、音楽の点をつける先生がいるといった話題が、
うちの掲示板でも他所の掲示板でも出ていましたけど、生徒達にピアノの生演奏を聴かせてあげるために、
コツコツレッスンに通って来る、こんな素敵な先生もいるんです♪
本当に嬉しくなってしまいました♪♪(^^)
●年齢制限は不要です♪ 野谷恵
1年間、このHPを見続けて下さっているという方からお電話がありました。
ずうっと、習いたい習いたいと思って見ていたとのこと、
ついに勇気を振り絞って、という感じのようでした。感動でした。。
「歳取ってるんですけど」と仰るので「歳は関係ありません」というと
「でも凄い歳なんです」と仰るので「凄い・・ってどれくらい」と聴くと「60過ぎてるんです」とのこと。
「全然問題ないです」と言いました。60代だろうが80代だろうが100代だろうが、
ピアノを習うのに何の問題があるでしょう?喜んでお引き受けしました。
数年前、受験生をK育大に入れた時、なんと、K育大の大学院に
その子のお母様も(学科の方で)通ってらしたのです。
親子で同じ学校の学生!素敵ではないですか!!
その子はお兄ちゃんがいたので、お母さんは多分、今の私と同じくらいの年齢かな?
今、自分が学生になるって考えるとウキウキするかも・・・・。
演奏活動だけではないですよね。勉強するのにも年齢制限は不要です♪(^^)
●・・・手・・・ 野谷恵
小さい頃から、東京の一流音大教授に学び、その後も各地のトップクラスに偉い先生に習い続けた彼女は、
自分でミスなく仕上げてくる事を求められる厳しいレッスンに耐え、
中学生くらいで、もうツェルニー50番他難しい曲を沢山弾いていましたが、
結局、音大へ行くことはできませんでした。
オクターブが速いタイミングで連続する曲で上手く弾けなかった時、偉い先生はこう言いました。
「君は手が小さいから、指の付け根を切る手術をしないと音大へ行くのは無理だね。」
・・・・結局、それがあまりにショックで、彼女はピアノをやめました。
最初のレッスンの時、私はその話に驚いて、彼女と手を(開いた状態で手のひら側を)重ね合わせてみました。
そうしたら・・・彼女の手は私より2,3mmくらい大きかったのです。
すぐに座り方から変え、脚や体の使い方を変え、手の使い方を説明し、
彼女の手は何も小さくないことを分かってもらいました。
その日、彼女は家へ帰ってから、ピアノをやめるきっかけになった曲を弾いてみたそうです。
「・・・弾けたんですよ!!なんだ、弾けるじゃない!!・・・って、・・・もう、ショックでした。」
弾き方さえ分かれば、彼女は音大を諦める必要はなかったわけです。
手術とまでは言われなくても、こういう話、多いですね。・・・あまりに悲しい・・・。
私は、技術的なことを文章だけで説明するのは不可能だと、
間違えて解釈したら返って危険だからと、何度も書いてきましたが、
手を少し(1cm以上。うまくいけば、2cm)大きく使う方法だけは、
できる範囲で文章で説明することにトライしてみようかと思います。
文章にまとめられたら、例外的文章レッスンのページをアップしてみようかと考え中です。
ただ、まだ悩んでいますので(誤解があると、本当に返って危険なので)、
実現しなかったら、許して下さい。しばらくじっくり考えます。
(この結論は「レッスンについて」のページにあります。)
●子供の「思いやり」 野谷恵
小学4年の★★ちゃんは、先週ひどい高熱を出して以来ずうっと寝込んでいて、
やっと良くなった途端に、どうしても泊りがけで出かける用があり、長い間ピアノに触れませんでした。
初めて受けるMコンクールが明日だというのに暗譜も忘れてしまったし、上手く弾けなくなりました。
私は元々「緊張に慣れる為」とか、「勉強の為」と言ってあって、別に賞等取らなくていいし、
予選も受からなくてもいいけれど、ただ、あまりに暗譜を忘れた状態で出て行って、
人前でボロボロになって哀しい思いをさせるのは可哀想と考えました。
それで、「今回は直前にずっと具合が悪かったりしてピアノ弾けなかったんだから、
仕方がないから、お休みしない?」と話しました。でも、★★ちゃんは、すぐには首を縦に振りません。
子供ながらに「棄権」が悔しいのかな・・・と思いつつ、その場でお母さんに電話して私の考えを話した所、
お母さんは「私もその方がいいと思ったんですよ。仕方ないから、って言ったんですけど、
『お金払ったのにもったいない』って言うんです。先生からも言ってやって下さい。」とのこと・・・。
つまり、★★ちゃんは「お母さんがお金を払ってくれたのに、行かなかったら、
お母さんがしてくれた事を無駄にするから悪い。」と考えていたわけです。。
その後、「お母さんも、本当に無理しなくていいって言ってたし、先生もそう思うよ・・・。
今回は仕方ないから、お休みしよう。」と言ったら、一気に肩の力が抜けたように
(本当に肩が数センチ下がり、)ほっとした顔をして、こっくり頷きました。
なかなか笑顔の作れない、シャイで不器用な子ですが、
いつの間にか、
そんな考え方、そんな「思いやり」を持てるほど成長していたんだなぁと、感動した出来事でした。。
●遠い北の町から・・・ 野谷恵
深川より北の、遠い町からお礼メールが届きました。
このHPを見て、私の門下生Hさんに是非習いたいと、以前連絡のあった大人の女性からです。
その後、彼女の町からは遠い深川のHさんの元へレッスンに通い、
目標だった今月の彼女の町の発表の場で無事演奏できたことや、
Hさんのレッスンを受けて、ピアノというものの奥の深さを改めて知り、
驚きの連続だといった事が嬉しそうに書かれていました。
彼女はこれからもレッスンを続けるそうで、「H先生から課題曲を頂き、
ラフマニノフのプレリュードを練習中です。」とのこと。また、遠くから、
キタラの門下生コンサート(11/30)にも来てくれると書いてありました。
紹介した私にわざわざこうして報告を書いてくれる礼儀正しさと共に、
本当に「出会い」と「よい勉強」を喜んでくれている、謙虚な向上心に感動しました。
遠い遠い北の町に、こんな素敵な「孫弟子」がいることを、心から嬉しく、心から誇りに思います。
ありがとう!キタラで会いましょうね!!(^^)
●感じ方 野谷恵
「今日はありがとうございました。
あとになって、あんなに大切なことを教えていただいても
いいのかな、、と思いました。 (・・・後略)」
初レッスンの感想って、その人が何を、どう、受け止めてくれたかがわかるので、
「ある程度は」ですが、その人の今後の成長のペースが見えます。
このメールをくれた「今日が初レッスンさん」は、こんな風に感じてくれたなら、
伸びるのがさぞ、速いだろうな、と思いました。(^^)
(その後、実際に、随分上手になりました。)
Part.2,’02年の日記より野谷恵
●ちいさなリサイタル 野谷恵
ネットでは宣伝できなかったのですが、某所で、私の生徒が、
ティータイムをはさんで小一時間の小さなコンサートをしました。
前半は久石譲3曲、ティータイムを挟んで後半はショパンのワルツ、ノクターン、
そして、リストのラ・カンパネラ。
まだ高校生ですが、小学校の頃から色々コンクール受賞歴のある子です。
でも、コンクール歴と「お客様に喜んで頂く演奏」は全く別です。
お話を頂いてから今日まで、本人がどれほど真剣に取り組んだかは、私が一番良く知っています。
あるレストランの企画で、お客様は(満員でも)少人数なのですが、
1曲1曲に、「本当にこの人数?」と思うような凄い音量の拍手。
最後は、大きな拍手が、いつまでも、いつまでも、止みませんでした・・・。
戸惑う本人に、近くの席にいた私が「声出して、ありがとうって・・」と小声で言うと、
「ありがとうございました」と言って、また一段と大きな拍手が・・・。
テマエミソとでも、先生バカとでも、な〜〜んとでも言って下さい!(笑)
大成功でした!!
いつまでも鳴り止まなかった拍手と、
その場で9月の門下生コンサートのチケットが10枚以上売れたことが何よりの証拠。
券を買って下さった方も、まだご都合の分からない方も、宣伝にご協力下さるとの事で、
チラシを沢山持って行って下さいました。
もっと、演奏の場を作ってあげたいと、心から、思いました。。
●ご機嫌ナナメの子・・・(^_^; 野谷恵
全国2位になって、でも、(1位になれなかったので)ご機嫌ナナメの
おちびちゃんが来ました。(いつも一人で来ます。)
お母さんからの電話で、ご機嫌が悪いのは聞いていました。
よかったね、とか、スゴイことなんだから、とか色々言っても、首を縦には振らないので、
オリンピックの話をしました。
「1回金メダル取った人は、次も必ず金メダルを取れると思う?」と聞くと、
その子は、首をちょっと横に振りました。
「そんなに簡単なものじゃないよね。金メダルを取った次の時に、銀や銅でも、
"すごいこと"だし、優勝した次の時に予選で落ちることだってあるの。
★★ちゃんは、3年連続銀賞で、1回も下がってないって、スッゴイことなの。分かる?」
と聞いたら、やっと、ちょっぴり納得した顔で、チョット頷いてくれました。
で、「よかったね。よくがんばったね。」と言ったら、またチョット頷いてくれました。
・・・・・一件落着(笑)
といっても、賞の事ばかり意識してピアノを弾くようになっては困りますから、
その後、聴いている人に(それが、審査員であっても、演奏会のお客さんであっても)、
ちゃんと、曲の素敵さが伝わるように弾く事の大切さを、
レッスンの中で、しっかり、話しました。(^^)
●当日予約 野谷恵
夕方、大人の生徒のレッスンをしていると電話が来て、
「今日はこれから、どうなってますか?」と、お久しぶりの人からのレッスン依頼。
超々多忙の人で、いつもレッスンは「当日予約」なのです。
元気に、嬉しそうに、レッスンを受けて帰っていきましたが、
帰り際に、明日、非常に重要な事があるのをケロッと話して・・・・。
『え〜〜〜っ!そーゆー時に、普通ピアノに来る??』と、驚くやら、呆れるやら・・・。
緊張をほぐす為だったのか、現実逃避だったのか(笑)。
でも、そういう時に、ピアノに来ようという発想が嬉しかったのでした。
うまくいくように、祈ってますからね!!
●月日を越えて・・ ・ 野谷恵
うちの大人の生徒の中には、十年以上の長いブランクのある再スタート組が数人います。
小さい頃ちょっとやっただけという大学生から、
音大卒業後、教えてはいたけれど、演奏からは遠ざかって、17,8年後に再スタートし、
コンクールで高い点を取るまでになったピアノの先生など、レベルも年齢も様々です。
その再スタート組の一人が、ピアノをやめた年の最後の発表会のプログラムを持ってきて、
今日、見せてくれました。
1982年・・・・・ちょうど、20年前です。
古い、すっかり色あせた紙のプログラムは、
でも、汚れてはいなくて、大切にしまわれていたのを物語っていました。
20年・・・・・。その、長い長い月日を越えて勉強を再開するのは、
勇気のいる事だったでしょうね・・・・。その勇気を出した事で得たものが、
彼女の人生にとって、意義深い、価値あるものであってほしい・・・・。
心から、そう思って、その古いプログラムを見せてもらいました。
私も頑張りますね・・・。
無限の可能性のある子供の生徒達、音大卒業後もさらに研鑽を積む生徒達、
そして、月日を越えて、色々な思いを抱えて、ピアノを再スタートした大人の生徒達・・・・・。
皆それぞれの人生にとって、そして未来にとって、価値あるものを伝えられるように・・・・
頑張りますね。(^^)
●はやっ!! 野谷恵
男の子みたいにさっぱりした感じの女の子(大学生)がいます。
結構いつも、ご機嫌よくて、自分から色々喋ってくれたりする、私の「お気に」の生徒です。
(って書いても、あんまりPCあけないから、別に、これ見て喜んではくれないんだけど・・笑)
小学校低学年頃までピアノやって、10年以上経って今年の5月から再開。
バッハの小品やショパンの「雨だれ」などもやりながら、好きだという「月光」の1楽章はかなり上手になりました。
でも、最近始めた「エリーゼの為に」が意外と難しいそう・・。
「ここ、弾けないんっすよねー。」と今日言ったところは、例の急に早くなるところ。
で、ちょっとした体の使い方のコツを話して、ちょっとした練習を数分したら弾けちゃって、
その瞬間、自分でびっくりして、「はやっ!!」(爆)
・・・そんなに、驚かんでも・・・(^_^;
●孫・・・ 野谷恵
金曜にレッスンに来た、まだ経験年数の少ないピアノの先生が、来るなり、
「先生、私の生徒、グレード受かったんですよぉ!」と、凄く嬉しそうに言いました。
小学生が7級って、早いのかな?私はよく分からないけど、
楽器店の先生としては、そのグレードに合格させる事も大事な仕事なのだそうで、
とにかく、本当に、本当に、嬉しそうでした。
私も嬉しかったです。
考えてみたら・・・・・・・マゴ弟子??
そっか、子供はいなくても、そういう「孫」はいるのね、私(笑)
●北海道(スキー抜き)ピアノレッスンツアー 野谷恵
強行スケジュール(連日のレッスンとレッスン見学と最後は勉強会=小演奏会)の中で、
大変熱心に勉強し、その上、空き時間には楽器店のスタジオを借りてまで練習した、
東京の皆さん、お疲れ様!!!
私にとって一番嬉しかったのは、今までの経験では、非常に変わりにくいタイプのはずの方が、
一番変わってくれた事でした。(つまり、素直とはとても言い難い論客・・・笑)
一日であれだけ変われたら、多分ご本人の意識の中に結構大きく残ったと思いますから、
今回は「分からない」と思った事も、そのうち必ず分かると思います。
他の皆さんも驚くほど変わってくれました。
中には、1日目に「今までピアノで勉強したうちの、4割は今日分かった。」と言ってくれて、
2日目に「今日5割り増しになった。」と言ってくれた方もいました。
(合計6割?!めちゃ嬉しいって、M君!)
皆さん、普通の大学や、普通のお仕事や、普通じゃない忙しさのお仕事(笑)の、
アマチュアピアニストです。
でも、そのピアノへの意欲や真剣さには、本当に感動し、色々考えさせられました。
この場で、改めて敬意を表します。
今回の「北海道ピアノレッスンツアー」(最初はスキーもあるはずだったのに、
結局、純ピアノの旅になったとか・・・)の中で得たものが、
少しでもお役に立って、
皆さんの人生を素敵に彩るピアノが、益々楽しくなったら・・・とても嬉しいです。(^^)
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